ウェバーさんと目のレッスンのこと
全米ベストセラー『脳はいかに治癒をもたらすか―神経可塑性研究の最前線』(ノーマン・ドイジ著、紀伊国屋書店刊)で詳しく紹介されたデイヴィッド・ウェバーさんは、43歳で失明、盲目に。
絶望の淵にあったとき、フェルデンクライス・メソッドに出会い、やがて視覚を取り戻して、のちにフェルデンクライス教師となりました。
そしてフェルデンクライス・メソッドで脳を活性化して再教育して視覚を改善する「目のレッスン」を作り、世界各国でワークショップを行ないました。
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私は2017年に、ウェバーさんの連絡先を探し出して連絡を取りました。そして、私が日本人のフェルデンクライス教師であることを伝え、このワークショップのレッスンを私が教えてもよいか尋ねました。
するとウェバーさん本人からすぐに返事があり、親切にも「あなたが自由にこのレッスンを教えてくれたら、うれしいです」と言ってくれたのです。
また、私が「この本に出てくるカール・キンズバーグ先生は、私の指導者養成コースのトレーナーの1人です」と伝えたら、「あなたが私のメンターのカール先生の元で勉強したと聞いて、うれしい。あなたは幸運でしたね」とのことでした。
そういうわけで、私はウェバーさんから、これらのレッスンを自由に教えて良いという許可をもらいました。
でも私は、アレンジなどせず、できる限りウェバーさんが教えた形のままでお伝えしたいと思っています。
実は、ウェバーさんは2018年にお亡くなりになったそうです。私が連絡を取った翌年に。それを昨年知りました。
あのとき、思い切ってウェバーさんに尋ねて良かったと思いました。
ウェバーさんは、眼科医を訪れたとき待合室で、盲目になりつつある患者や重度の視覚障害者たちに囲まれて座りながら、「自分が苦境から脱したら、何も手を打てないでいる人々をぜひ助けたい」と考えたそうです。そして、フェルデンクライス・メソッドこそが、その願いをかなえるためのツールであり、後にそのツールを磨き上げたものが、ウェバーさんのワークショップだったのです。
(2021年2月 記)